残置物撤去費用は誰が支払う?|賃貸・相続・売却ごとの費用負担と民法改正のポイント

他人の残置物撤去の費用 残置物撤去
残置物撤去

「残置物の撤去費用は、結局だれが払うの?」「賃貸と相続と売却でルールが違うって聞いたけど、本当?」──そんな疑問を持ってこの記事にたどり着いた方が多いと思います。

結論から言うと、残置物撤去費用の負担者は「賃貸」「相続」「売却」などの状況によって変わります。さらに、2020年の民法改正によって、原状回復義務や特約の考え方も整理され、契約書の書き方次第で「誰がどこまで負担するか」が明確に決めやすくなりました。

まずは細かい条文の話に入る前に、代表的な3つのケースで「誰が払うのが原則なのか」を先に整理しておきましょう。

残置物撤去費用は誰が支払う?まずはケース別の結論から

ここでは、賃貸・相続・売却の3つの場面を中心に、「原則として誰が費用を負担するのか」を先にまとめます。

ケース 原則の費用負担者 ポイント
賃貸
(アパート・マンション・戸建て)
借主
(入居者)
通常は借主負担。ただし、賃貸借契約の特約や、夜逃げ・孤独死などの事情で変わることがあります。
相続
(親の家・空き家の片付け)
相続人 家と同じく、残置物も相続財産の一部として扱われます。相続放棄をすれば負担から外れる場合もあります。
不動産売却
(中古戸建て・マンション売買)
実務上は売主が負担
することが多い
売主負担が一般的ですが、売買契約の条件によっては買主負担・折半など柔軟に決めることもできます。
夜逃げ・孤独死などで
所有者と連絡が取れない場合
ケースごとに異なる
(要・専門家相談)
勝手に捨てるとトラブルになりやすく、裁判所の手続きが必要なこともあります。詳しくは残置物を合法的に処分する4つの方法で解説しています。

このように、「誰が払うのか」は一見バラバラに見えますが、民法の考え方と契約書の内容を押さえれば、実はそこまで複雑ではありません。

次の章では、2020年の民法改正で何が変わり、なぜ「残置物撤去費用のトラブル」が発生しやすいのかを、できるだけ噛み砕いて解説します。

民法改正で何が変わった?残置物と費用負担の基本

2020年の民法改正では、賃貸借契約における原状回復義務設備の修繕義務家賃減額などのルールが整理されました。これにより、残置物撤去費用の負担についても、契約書であらかじめ決めておきやすくなっています。

借りたものは返す義務(民法第601条)

契約が終了したときは、借りていた物を返すのが原則です。ここでいう「物」には、部屋そのものだけでなく、備え付けの照明・エアコン・ガスコンロ・カーテンなども含まれます。

引っ越しの際に、備え付けの設備を不用意に処分してしまうと、原状回復義務を果たしていないと判断され、撤去費用や交換費用を請求されることもあります。

原状回復義務がより明確に(民法第621条)

改正後は、原状回復義務の内容を契約書の特約で具体的に定めるケースが増えました。例えば、

  • 自分で取り付けた設備・家具は退去時に撤去する
  • 備え付け設備に不具合がある場合の連絡方法
  • 残置物を残した場合の撤去費用の扱い

などが事前に示されていることがあります。「何を残したら違反になるか」を契約書で確認しておくことが、費用トラブルの予防になります。

修繕義務と費用負担の整理(民法第606条・608条)

基本的に設備の修繕義務はオーナー側にありますが、特約で借主側の負担範囲を広げるケースもあります。また、オーナーが修繕に応じない場合、借主が自ら修繕して費用を請求できる場面もあります。

設備トラブルが長期化すると、家賃減額や契約解除につながることもあるため、「どこまでが借主負担か」を契約書で確認しておくことが重要です。

家賃減額や契約解除との関係(民法第611条など)

エアコンや給湯など、生活に不可欠な設備の故障が放置されると、借主は家賃の減額や契約解除を求めることもできます。残置物の撤去費用とは直接別の論点ですが、設備の管理義務とセットで理解しておくと、賃貸トラブルをまとめて防ぎやすくなります。

賃貸で残置物を放置された場合の費用負担

賃貸物件で入居者が荷物を残したまま退去・夜逃げした場合、原則は元入居者(借主)が残置物撤去費用を負担します。ただし、現実には次のようなケースでオーナー側が負担せざるを得ないこともあります。

  • 借主の所在が不明で連絡が取れない
  • 支払い能力がなく、費用回収が困難
  • 次の入居者を急いで決めないと空室損が大きくなる

このリスクに備えて、近年は賃貸契約時に「残置物処分は借主負担」とする特約条項を入れる例が増えています。オーナーにとっても借主にとっても、契約書で誰がどこまで負担するかをはっきりさせておくことが、トラブル回避の第一歩です。

夜逃げや孤独死などで残置物が大量に残された場合、勝手に処分するとトラブルになるおそれがあります。
詳しい手続きについては、実家や他人の残置物を合法的に処分する4つの方法もあわせてご覧ください。

相続した家の残置物費用は誰が負担する?

親の家や実家を相続した場合、家の中の残置物も相続財産の一部として扱われます。原則として、相続人が片付けと処分の費用を負担します。

ただし、

  • 家庭裁判所で相続放棄をすれば、原則として残置物の処分義務も免れる
  • 相続人がいない場合は「相続財産管理人」を選任し、その管理人が処分を進める

といった選択肢もあります。相続財産管理人を立てる場合は、手続き費用だけで数十万円かかることもあります。

実家や親の家が物屋敷化している場合、荷物の量が多く、費用も高額になりがちです。
早めに専門業者へ見積もりを取り、相続人同士で費用負担を話し合っておくことが、トラブル防止につながります。

実家の片付けや物屋敷化の対処については、こちらも参考になります。
大量の不用品にうんざり…物屋敷化した実家を片付けるために親を説得する方法

売却前の残置物撤去費用は誰が負担する?

中古戸建てや中古マンションの売却では、実務上は売主が残置物撤去費用を負担するケースがほとんどです。室内を空にすることで内見時の印象が良くなり、早期売却や価格アップにつながりやすいからです。

一方で、任意売却や「現況有姿(げんきょうゆうし)」といった条件付き契約では、

  • 残置物をそのままの状態で買主が引き継ぐ
  • 残置物処分費用を買主負担とする代わりに、売買価格を調整する

といった交渉も行われます。いずれの場合も、残置物の扱いと費用負担を売買契約書に明記しておくことが重要です。

戸建ての残置物撤去費用の具体的な事例は、こちらで紹介しています。
家をまるごと片付けるといくら?戸建て一軒家12軒の残置物撤去費用

アパート・マンションの残置物撤去費用については、こちらも参考になります。
賃貸アパート・マンションの残置物撤去費用を17事例から比較

費用負担で揉めないために|契約書で確認しておきたいポイント

残置物撤去費用をめぐるトラブルの多くは、「誰がどこまで負担するのか」を事前に決めていなかったことが原因です。賃貸・売買・相続のどのケースでも、次のポイントを契約書や合意書で確認しておくと安心です。

  • 残置物を撤去する義務があるのは誰か
  • 撤去費用・運搬費・処分費をどちらが負担するか
  • 残してよい物・残してはいけない物の基準
  • 撤去の期限(いつまでに片付けるか)
  • 夜逃げ・孤独死・相続放棄など、想定外の事態が起きた場合の扱い

すでにトラブルが起きてしまっている場合や、裁判所を通した手続きが必要なケースについては、実家や他人の残置物を合法的に処分する4つの方法の記事で、手順をより詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 残置物撤去の費用は、基本的に誰が払うのですか?
A. 原則として、残置物の所有者や相続人が負担します。賃貸では借主、相続では相続人、売却では売主が費用を持つことが多いですが、契約内容によって変わるため、必ず契約書を確認してください。
Q. 民法改正で、残置物の扱いは具体的にどう変わりましたか?
A. 原状回復義務や設備の修繕義務が整理され、賃貸契約の特約で「残置物の処理方法」や「費用負担」をあらかじめ定めやすくなりました。これにより、トラブルを予防しやすくなっています。
Q. 親が施設に入って、賃貸に荷物だけ残っている場合は?
A. 原則は借主側の負担ですが、実務上は家族が片付けるケースが多いです。賃貸契約の特約や、施設入居時の契約内容を確認しつつ、オーナーと相談しながら進めるのが安全です。
Q. 相続した家の残置物を、勝手に捨ててもいいですか?
A. 相続人であれば原則として処分できますが、他の相続人の同意が必要な場合があります。相続放棄の手続き中や、相続人不在のケースでは、専門家に相談したうえで進めることをおすすめします。
Q. 残置物撤去費用を少しでも抑える方法はありますか?
A. 再販できる家具や家電を買取に回すことで、撤去費用の一部を相殺できます。物量が多い場合は、一括で任せた方が結果的に安くなることもあります。実際の費用感は、戸建て・賃貸・退去それぞれの事例記事も参考になります。

【まとめ】誰が払うかを早めに整理して、ムダなトラブルを防ごう

残置物撤去費用の負担者は、「賃貸」「相続」「売却」などの状況によって変わりますが、民法改正によって、契約書であらかじめ決めておくことがより重要になりました。

この記事で紹介したポイントを押さえておけば、

  • 費用負担の押しつけ合いによるトラブル
  • 想定外の高額請求
  • 勝手に処分してしまったことによる賠償リスク

といったリスクを大きく減らすことができます。

ドクターエコでは、

  • 賃貸退去・相続・売却などケース別の相談
  • 残置物の量と費用の目安の算出
  • 他の記事で紹介している事例ベースの見積りイメージの共有

なども含めて、ご相談・見積もりはすべて無料で承っています。


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この記事の監修者

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