2025年現在、国際エネルギー企業「BP」が公表した最新データによると、世界各国で未だ高水準のCO₂排出が続いています。
パリ協定(2015年)などの取り組みを経ても、世界全体では削減効果が十分に表れておらず、本記事では最新のランキングと各国の1980年〜2025年予測グラフを交えて解説します。
【前提】二酸化炭素を消費するのに必要な木の本数と森の面積
本記事で示す「必要な森林面積」「樹木本数」は、以下の前提条件にもとづいて算出しています。
- 成熟した樹木1本が1年間に吸収するCO₂量:0.022t(約22kg)
- 森林1haあたりの樹木本数:400本
これより、CO₂1百万トンを吸収するには 約4,550万本の樹木が必要となり、森林面積に直すと 約11万ha(札幌市の面積とほぼ同じ)に相当します。
各国の排出量ごとに同様の計算を行い、本記事では「地球の肺」という別名を持つアマゾン熱帯雨林(約550万km²)と比較して示しています。
10位:カナダ 549.3百万トン
1980~2020年の変化
1980年代初めは約250百万トンでしたが、経済成長で工場や自動車利用が増え、1990年代には約400百万トン、2000年代前半に約500百万トンに達しました。
2010年代末には再生可能エネルギー導入や炭素価格制度の強化で増加が緩やかになり、2020年は約527百万トンで横ばいとなりました。
2020年:抑制の成果
約527百万トンのCO₂は、乗用車約1.15億台分、東京ドーム約22万杯分です。 森にすると約600,000 km²(アマゾン熱帯雨林約5,500,000 km²の約11%、琵琶湖約670 km²の約900個分)に相当します。 再生可能エネルギー導入や炭素価格制度の強化で増加が緩やかに抑えられました。
2022年:寒冬と送電ロスで再増加
約551百万トン(2020年比+4.5%)で、車約1.20億台、ドーム約22.6万杯、森約625,000 km² (アマゾン約11.4%、琵琶湖約930個分)に増加。 厳冬の暖房需要増大と長距離送電ロス拡大が主な原因です。
2024年:依然続く増加傾向
約611百万トン(車約1.33億台、ドーム約25万杯)、森約696,000 km² (アマゾン約12.6%、琵琶湖約1,040個分)と見込まれます。 冬季暖房需要の高さと化石燃料依存が上昇を続けたと思われます。
2025年予測:対策の遅れが影響
約615百万トン(車約1.34億台、ドーム約25.3万杯)、森約700,000 km² (アマゾン約12.7%、琵琶湖約1,045個分)に。 送電網更新の遅れや再エネ導入の伸び悩みが増加を助長すると考えられます。
カナダの今後の取り組み
EV普及促進、送電網改修、建物断熱強化、再生可能エネルギー導入で排出削減を進め、 2030年までに2018年比で40%減を目指します。 ケベック州ではEV販売がこの4年で5倍に増え、都市部の削減効果に期待が高まっています。
9位:サウジアラビア 736.2百万トン
1980~2020年の変化
1980年からのCO₂排出量は、石油生産の拡大に伴い一貫して右肩上がりで、2020年には約616.1百万トンに達しました。
2020年:原油生産拡大で高水準
616.1百万トンは、乗用車約1.34億台、東京ドーム約25.4万杯、森林約699,000 km²(アマゾン約12.7%、琵琶湖約1,045個分)に相当。
石油生産拡大に伴い高水準を維持しています。
2022年:回復する生産と消費で急増
723.3百万トン(2020年比+17.4%)、車約1.57億台、ドーム約29.8万杯、森林約822,000 km²(アマゾン約14.9%、琵琶湖約1,230個分)に増加。
主に原油生産活動の回復と国内消費の増加に起因します。
2024年予測:高水準で安定
706.0百万トン(車約1.54億台、ドーム約29.0万杯、森林約802,000 km²/アマゾン約14.6%、琵琶湖約1,198個分)と見込まれます。
原油生産の増加ペースは安定的ながら高水準が続くでしょう。
2025年予測:再エネ遅れで持続
720.1百万トン(車約1.57億台、ドーム約29.6万杯、森林約818,000 km²/アマゾン約14.9%、琵琶湖約1,221個分)に。
再生可能エネルギー導入や効率化の遅れで、高水準が持続すると考えられます。
サウジアラビアの今後の取り組み
京都議定書は不参加でしたが現在はパリ協定に調印し、2030年までに排出集約度を削減する目標を設定。
原油依存度が依然高いため、再生可能エネルギー導入や政策インセンティブ、民間セクター参画、大規模ソーラープロジェクトの加速が鍵です。砂漠地帯での昼夜温度差を利用したクリーンクーリング技術など新技術にも期待が高まっています。
8位:イラン 817.9百万トン
1980~2020年の変化
1980年当初は中東でも比較的低い水準でしたが、原油・天然ガス産業の拡大で徐々に増加し、2020年には約756.6百万トンに達しました。
2020年:産業拡大で高水準
756.6百万トンは、乗用車約1.64億台、東京ドーム約31.1万杯、森林約859,800 km²(アマゾン約15.6%、琵琶湖約1,283個分)に相当。
原油・天然ガス産業の拡大で排出量が高水準を維持しています。
2022年:制裁下でも稼働継続
800.7百万トン(2020年比+5.9%)、車約1.74億台、ドーム約33.0万杯、森林約909,870 km²(アマゾン約16.5%、琵琶湖約1,358個分)に増加。
制裁下でもエネルギーインフラが稼働し続けたことが要因です。
2024年予測:高止まり見込み
794.7百万トン(車約1.73億台、ドーム約32.7万杯、森林約903,070 km²/アマゾン約16.4%、琵琶湖約1,348個分)と予測。
地震復興需要や輸出収入が経済を支え、高水準が続くでしょう。
2025年予測:さらなる増加
811.6百万トン(車約1.76億台、ドーム約33.4万杯、森林約922,275 km²/アマゾン約16.8%、琵琶湖約1,376個分)に。
投資不足と政治リスクが再エネ導入を妨げ、増加を助長すると考えられます。
イランの今後の取り組み
IAEAの支援による小型モジュール炉(SMR)研究や太陽光・風力プロジェクトを進めています。
制裁緩和と投資誘致が必要で、民間事業者の参画促進や省エネ技術の普及も今後の課題です。
7位:韓国 577.4百万トン
1980~2020年の変化
1980年代以降、急速な工業化でCO₂排出量が増加し、2020年には約597.6百万トンに達しました。
2020年:工業化ピーク
597.6百万トンは乗用車約1.30億台分、東京ドーム約24.6万杯分、森林約679,000 km²(アマゾン約12.3%、琵琶湖約1,010個分)に相当。
急速な工場稼働と輸送需要増が要因です。
2022年:微増傾向
602.1百万トン(2020年比+0.8%)、車約1.31億台、ドーム約24.8万杯、森約684,000 km²(アマゾン約12.4%、琵琶湖約1,020個分)に。
成熟工業の安定化で増加は小幅に留まりました。
2024年予測:大幅上昇へ
746.8百万トン(車約1.62億台、ドーム約30.7万杯、森約849,000 km²/アマゾン約15.4%、琵琶湖約1,270個分)。
累積的な産業増加傾向をモデルが強く反映しています。
2025年予測:さらなる増加
760.7百万トン(車約1.65億台、ドーム約31.3万杯、森約865,000 km²/アマゾン約15.7%、琵琶湖約1,290個分)に。
政策介入が追いつかなければ高水準が続く見込みです。
韓国の今後の取り組み
脱石炭政策強化や再エネ比率20%以上の目標、水素社会構築(FCEV導入+再エネ由来水素確保)を進め、
中小企業支援やスマートグリッド投資で排出抑制を図ります。
6位:ドイツ 596.2百万トン
1980~2020年の変化
1980年代から再生可能エネルギー導入や排出取引制度の整備で抑制に注力し、2020年は約648.4百万トンで頭打ち傾向となりました。
2020年:再エネ効果開始
648.4百万トンは乗用車約1.41億台分、東京ドーム約26.7万杯分、森林約737,000 km²(アマゾン約13.4%、琵琶湖約1,100個分)に相当。
再エネオークションと電力買取制度が効いています。
2022年:一時的増加
671.5百万トン(2020年比+3.6%)、車約1.46億台、ドーム約27.6万杯、森約763,000 km²(アマゾン約13.9%、琵琶湖約1,140個分)に増加。
電力価格高騰で石炭火力依存が一時的に回復しました。
2024年予測:微増維持
692.7百万トン(車約1.51億台、ドーム約28.5万杯、森約787,000 km²/アマゾン約14.3%、琵琶湖約1,175個分)と見込まれます。
再エネ拡充が増加ペースを抑えています。
2025年予測:微減傾向
683.8百万トン(車約1.49億台、ドーム約28.1万杯、森約777,000 km²/アマゾン約14.1%、琵琶湖約1,160個分)。
住宅断熱強化や地域エネルギー協同組合の成果が出始めます。
ドイツの今後の取り組み
送電インフラ強化、住宅断熱改修、省エネ技術導入、EEG見直しで長期安定投資を確保し、2035年までの石炭火力廃止を目指します。
5位:日本 988.8百万トン
1980~2020年の変化
1980年代後半は約550百万トンだった排出量が、経済成長と自動車・工場稼働増で2000年代前半に約500~600百万トンに上昇。
2008年の金融危機で一時的に需要が減り、2010年代後半は再生可能エネルギー導入と省エネ施策により増加ペースが緩やかになり、2020年は約1040.5百万トンで横ばいに近づきました。
2020年:金融危機の反動と抑制
約1040.5百万トンは、乗用車約2.26億台分、東京ドーム約43万杯分、森林約1,180,000 km²(アマゾン約21.5%、琵琶湖約1,765個分)に相当。
金融危機後の経済回復で反動的に増えたものの、再エネ拡大と省エネ推進で抑制されました。
2022年:微減傾向
約1032.7百万トン(2020年比−0.8%)、車約2.25億台、ドーム約42.4万杯、森林約1,174,000 km²(アマゾン約21.3%、琵琶湖約1,755個分)。
再エネ比率向上と省エネ・DX化の進展でわずかに減少しました。
2024年予測:増加再開
約1283.4百万トン(車約2.79億台、ドーム約52.9万杯、森林約1,458,000 km²/アマゾン約26.5%、琵琶湖約2,177個分)。
過去の高増加トレンドを反映し、化石燃料依存が残るため増加すると予測されます。
2025年予測:高止まり
約1289.2百万トン(車約2.80億台、ドーム約53.1万杯、森林約1,465,000 km²/アマゾン約26.6%、琵琶湖約2,186個分)。 政策効果が追いつかず、高水準が続く見込みです。
日本の今後の取り組み
2030年までに2013年比46%削減を目指し、家庭用太陽光の普及拡大、省エネ・DX化推進、需要調整市場とVPP導入を強化。 地方自治体の独自施策や断熱改修で電力需要を抑え、カーボンニュートラルに向けた省エネ技術の導入が鍵となります。
4位:ロシア 1,815.9百万トン
1980~2020年の変化
ソ連崩壊後に排出量が急減し、その後再び増加基調へ。2020年には約1,632.9百万トンに回復しました。
2020年:高水準維持
1,632.9百万トンは車約3.55億台、東京ドーム約67.2万杯、森林約1,856,000 km²(アマゾン約33.7%、琵琶湖約2,780個分)に相当。 ソ連崩壊後の産業再開で高水準を維持しました。
2022年:10.4%増加
1,802.2百万トン(2020年比+10.4%)、車約3.92億台、ドーム約74.1万杯、森林約2,048,000 km²(アマゾン約37.2%、琵琶湖約3,060個分)に増加。 ウクライナ情勢や輸出政策変動で原油輸出が増加したことが要因です。
2024年予測:一見減少
1,425.4百万トン(車約3.10億台、ドーム約58.6万杯、森林約1,620,000 km²/アマゾン約29.5%、琵琶湖約2,420個分)。 1990年代の大幅減少データがモデルに影響しています。
2025年予測:安定推移
1,408.4百万トン(車約3.06億台、ドーム約57.9万杯、森林約1,600,000 km²/アマゾン約29.1%、琵琶湖約2,390個分)。 政策対応の遅れが高水準を持続させる見込みです。
ロシアの今後の取り組み
再エネ容量オークション拡充、極東地域への制度対応、冬季暖房需要対策、パイプライン輸送効率化、都市部の汚染対策を進める必要があります。
3位:インド 3,062.3百万トン
1980~2020年の変化
経済成長と人口増で排出量は急拡大し、2020年には約2,421.6百万トンに達しました。
2020年:急増期
2,421.6百万トンは車約5.26億台、東京ドーム約99.6万杯、森林約2,752,000 km²(アマゾン約50.0%、琵琶湖約4,110個分)に相当します。 急速な成長と化石燃料補助継続が影響しました。
2022年:16.9%増加
2,831.2百万トン(2020年比+16.9%)、車約6.15億台、ドーム約116.4万杯、森林約3,217,000 km²(アマゾン約58.5%、琵琶湖約4,800個分)に増加。 エネルギー需要の急増が要因です。
2024年予測:一見減少
2,633.9百万トン(車約5.73億台、ドーム約108.3万杯、森林約2,993,000 km²/アマゾン約54.4%、琵琶湖約4,470個分)。 モデルが急増期データを反映しつつも再エネ遅れが課題です。
インドの2025年予測:再増加
2,694.4百万トン(車約5.86億台、ドーム約110.8万杯、森林約3,062,000 km²/アマゾン約55.7%、琵琶湖約4,570個分)。 補助金撤廃遅れと需要増が続く見込みです。
今後の取り組み
太陽光・風力拡大、スマートグリッド・マイクログリッド構築、バイオマス活用で分散型再エネネットワークを強化します。
2位:アメリカ 4,911.4百万トン
1980~2020年の変化
1980年代から増加し、2008年金融危機で一時減少後、2020年には約4,714.6百万トンに回復しました。
2020年:回復と高水準
4,714.6百万トンは車約10.25億台、東京ドーム約193.9万杯、森林約5,358,000 km²(アマゾン約97.4%、琵琶湖約8,000個分)に相当。 経済回復と化石燃料利用で高水準を維持しています。
2022年:7.8%増加
5,078.9百万トン(2020年比+7.8%)、車約11.04億台、ドーム約208.9万杯、森林約5,771,000 km²(アマゾン約104.9%、琵琶湖約8,620個分)に増加。 エネルギー消費増と政策の遅れが要因です。
2024年予測:高止まり
5,727.7百万トン(車約12.45億台、ドーム約235.6万杯、森林約6,509,000 km²/アマゾン約118.3%、琵琶湖約9,720個分)。 天然ガス転換やCCUSが進むも高水準です。
2025年予測:ピークへ
5,744.0百万トン(車約12.49億台、ドーム約236.2万杯、森林約6,527,000 km²/アマゾン約118.7%、琵琶湖約9,740個分)。 メタン漏洩対策や電化推進がピークアウトの鍵になります。
アメリカの今後の取り組み
RE100達成、PEV・FCEV普及、メタン漏洩対策、CCUS実証で多層的な排出抑制を図ります。
1位:中国 11,902.5百万トン
1980~2020年の変化
急速な工業化・都市化で排出量は急増し、2020年には約10,905.7百万トンに達しました。
2020年:世界最大水準
10,905.7百万トンは車約23.71億台、東京ドーム約448.5万杯、森林約12,393,000 km²(アマゾン約225.3%、琵琶湖約18,500個分)に相当。 工業化と都市化の急進展が要因です。
2022年:4.1%増加
11,350.5百万トン(2020年比+4.1%)、車約24.68億台、ドーム約466.8万杯、森林約12,898,000 km²(アマゾン約234.5%、琵琶湖約19,250個分)に増加。 石炭依存と高止まりするエネルギー需要が影響しました。
2024年予測:さらなる増大
11,656.3百万トン(車約25.34億台、ドーム約479.4万杯、森林約13,246,000 km²/アマゾン約240.8%、琵琶湖約19,770個分)。 再エネ投資は進むものの石炭段階的廃止が課題です。
2025年予測:世界最大維持
11,921.4百万トン(車約25.92億台、ドーム約490.3万杯、森林約13,547,000 km²/アマゾン約246.3%、琵琶湖約20,220個分)。 NEV普及とクリーン製造技術で脱炭素化を加速します。
中国の今後の取り組み
NEV普及・充電インフラ整備、SMRなどの技術革新、石炭段階的廃止ロードマップ実現で脱炭素化を加速します。
トップ10国の必要な森林面積(アマゾン熱帯雨林と比較)
※アマゾン熱帯雨林の面積は約5,500,000 km²です。
国 | 必要森林面積 | アマゾン比 |
---|---|---|
中国 | 13,547,000 km² | 約246% |
アメリカ | 6,527,000 km² | 約119% |
インド | 3,062,000 km² | 約56% |
ロシア | 1,600,000 km² | 約29% |
日本 | 1,465,000 km² | 約27% |
イラン | 922,275 km² | 約17% |
韓国 | 865,000 km² | 約16% |
サウジアラビア | 818,000 km² | 約15% |
ドイツ | 777,000 km² | 約14% |
カナダ | 700,000 km² | 約13% |
上の画像とグラフを見ると、各国の経済活動を支えるのに、こんなにも森林が必要になるのかとビックリしてしまいますね。
二酸化炭素排出量TOP10の国だけでアマゾン10こ分の森林が必要とされています。
さらに、毎年、森林は減少していることも加えると、二酸化炭素が地球温暖化に関係しているとしたら、それは本当に深刻な問題だといえるでしょう。

※掲載した予測値は1980年〜2022年の実績データを線形回帰モデルで外挿したものです。実際の排出量は各国の政策動向や技術革新によって変動します。Global Carbon Atlas