毎年クリスマス翌日に廃棄されるケーキは少なくありません。まず“なぜ起きるか”を構造で捉え、家でも店でも実行できる対策に落とし込みます。
問題提起:翌日に“捨てるケーキ”が生まれる構造
クリスマスケーキは、どのくらい捨てられている?
推定:クリスマス直後に廃棄されたケーキ等は約79トン(レンジ 34〜152トン)。
ホール換算で約16万個(500g/個想定)、一人分では約79万人分(100g/人想定)。
もし無駄にならずに届いていれば、中規模都市まるごと一夜のデザートをまかなえる規模。私たちが1カット余らせる積み重ねが、数十万食という“見えない山”になっています。
ちなみに、2024年の日本の出生数は約68万6000人。廃棄されたクリスマスケーキだけで新生児全員にケーキを届けられる量でもあります。
※概算前提:ホール500g/個、1人分100g。季節菓子を含む推計。
廃棄量の換算(ホール個数・人数)
| 総量 | ホール個数(500g/個) | ホール個数(400g/個) | 人数換算(100g/人) |
|---|---|---|---|
| 34t | 約68,000個 | 約85,000個 | 約340,000人分 |
| 79t(中央値) | 約158,000個 | 約197,500個 | 約790,000人分 |
| 152t | 約304,000個 | 約380,000個 | 約1,520,000人分 |
※四捨五入の概算。ホール重量やカットサイズにより上下します。
換算の前提
- ホール重量の目安:4–5号=400–500g、6号=約700g
- 1人分カット:80–120g(中間値100gを使用)
- 総量は「クリスマス向け菓子を含む」推計。ケーキ単独の全国統計は未整備
なぜお店は“少し多め”に作るの?
結論:3個作って2個売れれば黒字になるケースが多いからです。利益を出すために「欠品(売り切れ)」より、少し過剰に作る方が利益を生みやすい構造が、こうしたクリスマスケーキの大量廃棄を招いています。
例えば、こんな計算をしていみます。
ケーキの売値P=5,000円/原価C=2,200円/“売り切れの評判ダメージ”g=800円
- 3個作るコスト:2,200×3=6,600円
- 2個売れた売上:5,000×2=10,000円
- 余り1個を捨てた場合の利益:10,000−6,600=+3,400円(黒字)
- 余り1個を半額で売れたら:10,000+2,500−6,600=+5,900円(さらに黒字)
要するに、1個捨てることになったとしても3個のクリスマスケーキを作ったほうが、利益を生むのです。
完売だとなぜ、損をするのか?
完売した場合、原料も全て残すことないので、利益を最大化できたと普通なら考えるかもしれません。
しかし、商戦となると話が少し変わってきます。
- 欠品の損=(売値−原価)+評判ダメージ=(5,000−2,200)+800=3,600円
- 作り過ぎの損(捨てる想定)=原価=2,200円
つまり、完売させずに売り続けることができれば、消費者の口コミや評価を得られる機会の損失になったり、シェアマーケットを失ったりすることになります。
→ 「欠品の方が痛いので、在庫は“少し過剰”に寄りやすい。」というのが現状です。
半額販売できた場合でも利益になる
- 余った1個の売上(半額):2,500円
- その1個の原価:2,200円
- 差額:+300円(=2,500 − 2,200)
=余剰を値引きで売れればダメージはさらに小さく、欠品3,600円に比べて在庫は“少し過剰”を許容しやすくなります。
| 売り方 | 回収額 | 余剰1個の損益(= 回収 − 原価2,200) |
|---|---|---|
| 廃棄 | 0円 | −2,200円 |
| 30%引き | 3,500円 | +1,300円 |
| 50%引き(半額) | 2,500円 | +300円 |
| 70%引き | 1,500円 | −700円 |
※数値は例。実際は店舗の売価・原価で置き換えてください。
それ以外の原因3つ
- 需要集中:12/24〜25の超短期決戦(販売機会はほぼ48時間)。
- 衛生・表示:生菓子は消費期限が短く、翌日販売や寄付が難しい。
- サイズ誤差:5号・6号を人数に合わず購入→家庭で余らせやすい。
これらもクリスマスケーキを廃棄する原因です。
クリスマスケーキは2日間しか需要がなく、また生菓子ということで消費期限も極めて短いという特徴もあり、さらにサイズの誤差もあるので、「売れなければ廃棄」という構造が生まれやすい特性もあります。
企業が極端な食品ロスを出さないために行政が抑制するための法律や規制も行われています。
行政が進めるフードロス対策6つ
食品ロス削減推進法(2019施行)
国・自治体・事業者・消費者の役割を定め、普及啓発や計画づくりを制度化した土台の法律。
NO-FOODLOSS PROJECT(国民運動)
“ろすのん”で周知。食べきり・持ち帰り・食品寄附・てまえどり等の行動を広報し、教材やポスターも配布。
「てまえどり」公式資材(小売向け掲示物)
棚の手前の商品を選ぶ購買行動を促すポスター等を3省連名で無償配布。店舗掲示で行動変容を後押し。
食品ロス削減月間(10月)・食品ロス削減の日(10/30)
消費者庁・農水省・環境省が連携し、10月に集中的な啓発や事例紹介・ポスター展開を実施。
サプライチェーン実証(期限管理×動的値付け等)
賞味期限のデータ化やダイナミックプライシング等の実証で、在庫適正化と廃棄抑制を検証。
自治体の「30・10(さんまる・いちまる)運動」
乾杯後30分&お開き前10分は着席して食べきる――宴会の食べ残し削減を自治体が周知。年末年始など重点期間に展開。
企業ができる事前にクリスマスケーキ廃棄を減らす方法
需要側を賢く誘導
何人で食べるか、いつ食べるか、冷蔵庫の空きはあるかを確認し、号数だけに頼らずサイズ提案。受け取り日は23〜26日に分け、予約特典やハーフ・カップケーキで「買い過ぎ」を防ぎます。
供給側を見える化
予約を中心にして当日の製造は最小限に。店頭やアプリで在庫数を見せ、18:00→19:30→閉店前の段階的な値引きを定時実施。天気や来店数を見て仕込み量を小刻みに調整します。
保存&転用を標準化
会計時にQRで「小分け→二重包み→冷凍」「前日からの冷蔵解凍」を案内。翌朝に使える簡単アレンジ(トライフル・アイス重ね・フレンチ風)も配布し、家で食べ切れるようにします。
廃棄の適正化
食べられない分は水分を切り、紙で包んで指定袋へ。収集直前に出して臭い・液だれを防止。箱やフィルムは資源分別。事業者は食品リサイクル法の基準とマニフェストを徹底します。
私たちができる7つのフードロス対策
消費者が賢く選べば、販売側も在庫を適正化でき、ロス削減と利益の両立に近づきます。
0) まず予約する
予約なら「確実に買える・行列が短い・人数に合うサイズを選べる」。お店も需要を読みやすくなり、過剰製造が減ってロス削減に直結します。
1) サイズを決めてから買う
人数×1カット(目安100g)で必要量を先に計算。迷ったらハーフやカップで“食べ切り設計”。
2) 受け取り日を分散する
家族の予定に合わせて23〜26日に分けて受け取り。集中を避けるほど余りにくくなります。
3) 当日シェアを前提にする
親戚・友人・職場に取り分け前提で声かけ。小皿・ラップを多めに用意してスムーズに配る。
4) 余りは“5分冷凍”で救う
1カット→ラップ密着→袋で二重→平置き冷凍。果物は別容器。解凍は冷蔵で6〜8時間。
5) 翌朝アレンジで食べ切る
トライフル、アイス重ね、フレンチ風で楽しく消費。家族の好みで1つ決めておくとラク。
6) アレルギーと日付ラベル
小分け包みに日付・中身・アレルゲンをメモ。家族が間違えない工夫で安全に。
7) 正しく“捨てる”も大事
食べられない分は水切り→紙で包む→指定袋。箱やフィルムは資源分別。収集日は地域ルールに従う。
年末年始に読みたい関連リンク
年末年始の収集日・分別は自治体ごとに異なります。 年末年始のごみ収集リンク集で最新情報を確認してください。
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よくある質問
- Q. 予約は不必要?
- A. 不要ではありません。予約は推奨です。確実に買える・行列短縮・人数に合うサイズを選べるため、あなたにもお店にもプラス。ロス削減にもつながります。
- Q. いつなら当日でも大丈夫?
- A. 23・26日など混雑が弱い日、夜の値引き狙い、冷凍/カップ系で代替できる場合、地元の混雑が少ない店なら当日でもOKなことがあります。
- Q. 予約のコツは?
- A. 人数×1カットで必要量→受取枠を分散(23〜26日)→キャンセル規定と受取時間を必ず確認。迷ったらハーフ/カップで“食べ切り設計”。







