目に見えない大きさのプラスチック粒子“マイクロプラスチック”は、最新の研究結果によると、呼吸や食事を通じて人体内に取り込まれ、さまざまな健康リスクを引き起こす可能性が指摘されています。
本記事では2025年最新の研究結果をもとに、人体への影響、環境・社会問題、発生源と原因、私たちにできる対策まで解説していきます。
気にしすぎ?マイクロプラスチックが人体に与える影響とリスク
呼吸器系への沈着と慢性炎症
WHOの総説によると、直径1〜10µmのマイクロプラスチック粒子は気管支を通過し、肺胞まで到達することが確認されています。
肺のマクロファージ(貪食細胞)がこれらを排除しようと繰り返し炎症反応を起こすことで、線維化(組織の硬化)を招き、長期的には呼吸機能の低下や喘息悪化を引き起こすリスクがあると警告されています。
血管内皮透過と内分泌攪乱
Nature Medicine(2023年)では、直径1µm未満のナノプラスチックが血管内皮細胞を通過し、サイトカイン(炎症性シグナル物質)の過剰放出を誘発、動脈硬化や心血管疾患を促進するメカニズムが示されました。
特に小児や高齢者では、血液ー脳関門も透過する恐れが指摘されています。
内分泌攪乱と神経毒性
動物実験をまとめたFrontiers in Environmental Science(2025年)のレビューでは、マイクロプラスチック表面に付着したビスフェノールAやフタル酸エステルなどの内分泌攪乱物質が、消化管から血液中に移行し、ホルモン受容体を撹乱することが報告されています。
さらにFrontiers in Neuroscience(2025年)のマウス実験では、慢性的なナノプラスチック曝露が学習・記憶機能に障害を与える可能性が示されています。
マイクロプラスチックはどこで発見される?
河川や下水処理場が9割
UNEP(2024年)の報告によると、海洋に漂うマイクロプラスチックのうち約80~90%が河川・下水処理場など陸域由来です。都市部や工業地域から直接流出する排水が主な供給源となり、海上からの流入は比較的少数派にとどまっています。
農地・飲料水への二次汚染
欧州環境庁(EEA)の調査(2023年)では、農業用マルチフィルムや下水汚泥を施肥に利用した農地に、1haあたり最大200kgのマイクロプラスチックが蓄積していると推計されています。
また、飲料水調査では一部の地域で飲料水のマイクロプラスチック濃度が海洋表層水を上回るケースも報告され、安心して飲める水源の確保が課題です。
詳しくは、以下の記事でも紹介しています↓
日本も原因?マイクロプラスチックが人体に悪影響?危険な理由は残留性有機汚染物質…
マイクロプラスチックの発生源や原因はどこから?
衣類合成繊維からの微細繊維流出
世界の衣類洗濯で毎年約150万トンのマイクロファイバーが下水に流出し、その回収率は20%以下に留まるとUNEPは報告します。特にポリエステル製衣類から排出される繊維は細く軽いため、下水処理場を容易にすり抜け、最終的に河川・海洋に到達します。
自動車タイヤ・塗料の粉塵化
自動車タイヤや建築塗料など高摩耗製品からは、年間で5,000万トンを超える二次マイクロプラスチックが発生すると推計されています。これらは道路走行中に削れ飛び、雨水や大気降下を通じて都市域に蓄積。EEAは都市域での大気中濃度モニタリングを推奨しています。
日本でのマイクロプラスチックの排出量は…
参照元データ: 環境省「令和6年度 日本の海洋プラスチックごみ流出量の推計」(PDF)、 Nihei et al. (2020) “High‑Resolution Mapping of Japanese Microplastic and Macroplastic Emissions from the Land into the Sea”(Water誌)、 JAMSTEC「日本近海では年間2.8万トンが沈降するマイクロプラスチックを確認」調査報告
日本で計測されているマイクロプラスチックの推移グラフです。基本的に右肩上がりにふえていることがわかります。
私たちにできる具体的な対策
- 洗濯時に20µm以下のマイクロファイバー・フィルターを使用し、排水中の繊維を90%以上捕集する。
- セルロース誘導重合体製の生分解性プラスチック製品を選択し、使用後の粉砕・分解を促進する。
- ペットボトルやレジ袋はマイボトル/エコバッグで代替し、使い捨てプラスチック削減を徹底。
- 地域の河川・海岸清掃ボランティアに参加し、マイクロプラスチックを含む漂着ゴミを回収。
- 製品購入時に「マイクロプラスチック低排出技術」を採用する企業を支援。
などが効果的とされています。
それ以外にもできる取り組みは以下の記事で紹介しています↓
あなたはいくつ達成?3R→5R→7R→10R→18R 令和時代の環境問題取り組みがスゴイ…
応援したい企業や自治体のプロジェクト
例えば、日本では以下の企業がマイクロプラスチック低排出技術を採用しています。
企業名 | 技術・取り組みの概要 |
---|---|
伊藤忠ファッションシステム | 繊維くず排出抑制のファッション素材管理 |
タキヒヨー | LMP認証素材の開発と製品化 |
帝人フロンティア | 非起毛素材による洗濯排出低減 |
JFEエンジニアリング | 船舶用マイクロプラスチック除去装置 |
スズキ | 船外機搭載型MP回収装置の世界初実装 |
住友ゴム工業 | 人工芝からの環境流出を防ぐ取り組み |
ダイセル | 生分解性セルロースアセテートによるマイクロビーズ代替素材 |
島津製作所 | 環境水からMPを自動前処理・回収する装置「MAP‑100」の開発 |
こうした企業の製品を買ったり、株式を買うことで投資しながら応援する方法も考えられますね。
または、地域によってはふるさと納税にて、ゴミの削減やリサイクルや環境保護、保全に関する募集もしています。
例えば、資源氏サイクル率日本一の街を謳う鹿児島県大崎町では『2030年までに使い捨て容器の完全撤廃・脱プラスチックを実現』を目標に定め、その資金をふるさと納税や寄付で集めています。
6. よくある質問(FAQ)
- Q. マイクロプラスチックはどこまで体内に入り込む?
A. 20µm以下のMNPsは肺胞へ、<1µmは血液ー脳関門にも到達する可能性があると言われています。 - Q. 自宅で今すぐできる対策は?
A. 洗濯フィルターや生分解性素材に切り替える、清掃活動参加などが簡単かつ効果的でしょう。 - Q.プラスチックストローを廃止したくらいでは、変化がないのではないか?
- A.ストローは海洋プラスチックごみの中でも7番目に多いというのが事実です。
【まとめ】マイクロプラスチックは思っている以上に問題の可能性も
マイクロプラスチックは私たちの健康と環境に深刻な影響を及ぼす“見えない脅威”です。しかし、家庭での簡単な対策や最新技術の活用、政策への働きかけを通じて、その被害を大幅に減らすことが可能です。まずは今日からできる一歩を踏み出しましょう。