「日本のリサイクル率は89%!!」 と環境省が発表していますが、実はその中身を世界基準で見直すと、「本当のリサイクル率は25%前後しかない」ことをご存じですか?
日本は一見すると欧米よりも進んでいるように見えますが、その大部分は「サーマルリサイクル=焼却して熱を回収」という方法。
つまり「燃やす」ことがリサイクルに数えられているのです。
ペットボトルは2023年度のリサイクル率が85%と世界でもトップクラスですが、そのうち2割近くは海外に輸出されて再資源化されています。
国内で循環している量はまだ十分とは言えません。 2025年の最新データをもとに、日本のリサイクルの“光と影”を一緒に見ていきましょう。
日本がペットボトルを国際レベルでリサイクルするべき3つの理由
そもそも、なぜ日本はプラスチックをリサイクルしないのでしょうか?
日本はプラスチックゴミの排出量(一人あたり)が世界第2位であり、その責任はとても大きいです。
日本が出しているプラスチックゴミの影響で、次のような事が起きています。
【2019】日本は33位!世界で一番ゴミを出している国ランキングワースト10(一人あたり)>
世界中でマイクロプラスチック・プラスチックが増え続けている
↑まず最初に紹介するのが、世界中で問題となっているプラスチックゴミ、マイクロプラスチックの問題です。
なんとポイ捨てや不適切な処理がされたプラスチックごみが、巡り巡りに回って、私たち人間の体の中にも入ってきてしまっています。
さらには、水道水や塩などの日常口にするものにも、マイクロプラスチックが含まれていることも確認されており、1年間でおよそ12万粒ものマイクロプラスチックを体内に取り込んでいるという調査結果も出ています。
↑プラスチックごみを誤飲して死んでしまった海洋生物のニュースも後を立ちません。
日本も原因?マイクロプラスチックが人体に悪影響?危険な理由は残留性有機汚染物質…>
50年で石油がなくなりプラスチックを使えなくなる
最近はニュースにされませんが、石油やガスなどの天然資源は、早くて50年で枯渇すると言われています。
2070年には石油が枯渇し、その2年後には天然ガス、100年後には石炭が枯渇することが統計で出されています。
つまり、あと50年もすれば、快適で便利な生活を与えてくれている石油由来のプラスチック容器、ナイロンでできている洋服などは生産できなくなるということです。
あと20年でゴミの埋め立て場所がなくなるから
当たり前と思うかもしれませんが、捨てられた燃やせるゴミはゴミ処理施設で焼却され処理されています。
そして、燃やされたゴミは灰となりカサも大幅に減ります。
↑しかし、それでも日本全国の最終処分場の残余年数は20年と言われています。
なぜなら2018年になり、中国やマレーシアなど日本のゴミのプラスチックゴミを輸入していた国が相次いでプラスチックゴミの輸入を禁止しています。
これを受けて日本ではプラスチックゴミの処理が追いつかなくなり、環境省も
- 一時的に保管できるプラスチックゴミの量を2倍に引き上げ
- 産業用のプラスチックゴミを焼却炉で燃やせるように要請
という緊急処置をとっています。
そのため日本では、再利用できるものはリサイクルをして、なるべくゴミを減らしていくことが急務になっています。
なぜ20年後にゴミを捨てられなくなる?ゴミを捨てられない中国の現状に驚愕… >
89% vs 25% 日本のリサイクル率の真実とは?
PETボトルリサイクル推進協議会によれば、日本ではペットボトルのリサイクル率は85.0%と、分別回収は世界トップクラスに進んでいます。
そして、廃プラスチック全体の利用状況を見ると、
- マテリアルリサイクル:22%
- ケミカルリサイクル:3%
- サーマルリサイクル:64%
これらを合計すると有効利用率は89%という数字が出ています。 ヨーロッパのプラスチックリサイクル率が30%前後と比較すると、日本は「リサイクル先進国」に見えます。
しかし実態はそうとも限りません。
なぜなら、一番多い割合を占めるサーマルリサイクルは、焼却して熱を取り出しているだけだからです。
「燃やしているのにリサイクル?」と違和感を覚える方も多いでしょう。実際にこの方法は日本独自の定義で、海外ではリサイクルとして認められていません。
つまり世界基準で見れば、日本のリサイクル率はたった25%前後にすぎないのです。
内訳を見ると、国内で再資源化されたのは 約41.5万トン、海外で再資源化されたのは 約12.6万トン。 数字だけ見れば高水準ですが、その約2割は海外に依存しているのが現状です。
近年は「ボトル to ボトル」と呼ばれる、使用済みPETを新しい飲料ボトルに再生する取り組みも増えています。 しかし、まだ全体の一部にとどまっており、国内資源循環の強化が今後の課題です。
それでは、サーマル・マテリアル・ケミカルリサイクルについて、もう少し詳しく見ていきましょう
世界基準ではない?日本のリサイクル方法3つ
日本ではどのようにリサイクルが行われているかご存知ですか?
回収されたプラスチックごみは、主に3つのリサイクル方法で行われています。
サーマルリサイクル:57%がリサイクルという項目で燃やされている
サーマルリサイクルとは、ゴミを焼却したときに出る熱エネルギーを回収・利用するリサイクル方法です。
焼却エネルギーを使って発電し、その焼却熱を回収して近隣の施設の暖房や温水プールなどに供給していることがあります。
この「サーマルリサイクル」という言葉は日本で作られ、ヨーロッパで“サーマルリカバリー”と呼びリサイクルとされていない場合があります。
マテリアルリサイクル:世界基準のリサイクル率はたった23%
マテリアルリサイクルとは、廃棄物を製品の原料として再利用するリサイクル方法です。
- 材料リサイクル
- 材料再生
- 再資源化
- 再生利用
とも呼ばれています。
例えば、使用済みの缶や金属、プラスチックなどを砕いたり、溶かしたりして、再びそれぞれを作る原材料にしています。
ペットボトルは粉砕・加工され、繊維化して衣料などの生産に利用されています。
しかし、たった23%しか、再生資源となっていない現実を知ると、「私たちが普段しているゴミの分別は意味あるの??」と、思わず疑問を感じてしまいます。
ケミカルリサイクル:最新科学で解決できるのはわずか4%
ケミカルリサイクルは、使用済みプラスチック製品を熱で分解して、合成ガス、分解油などの化学原料にしたり、科学的に分解して他の化学物質に転換して利用するリサイクル方法です。
化学構造を分解で変化させるため、「ケミカルリサイクル」と呼ばれています。
日本のリサイクルの問題点4つ
リサイクル活動によって環境問題の改善をすることができますが、実際にはメリットばかりではないようです。
汚れているとリサイクルできない
プラスチックのごみはただ分別して出せば良いわけではありません。
汚れがついているプラスチックごみは、リサイクルすることができないのです。
なぜなら、汚れや異物などが混じっていると、輸送や選別、異物の処理にたくさんの手間と費用かかってしまいますし、リサイクル製品の品質が効率的で安定的なリサイクルをすることができないからです。
汚れの落ちないものは可燃ごみになってしまいます。
リサイクルごみとして分別する時には、汚れがついているものがあったら水洗いなどで必ず汚れを落としましょう。
コストがかかる
リサイクルにはコストがかかることも問題になっています。
リサイクル製品を作るというのは、そう簡単なことではないのです。
円高になると海外から新しい資源を安く輸入することができるようになります。
その影響で国内の再生資源は高くなり、国内のリサイクル製品が使われにくくなってしまうのです。
その他にもリサイクル製品にするまでには、
- リサイクル施設までの運搬・輸送費
- リサイクル製品の選別などの作業にかかる人件費
このような費用も膨大にかかる場合があります。
リサイクル製品を作るために、まだまだ多くの費用がかかることも問題なのです。
回収システムが無くなってきている
資源の回収システム自体が無くなっていることもリサイクルが進まない問題の1つです。
新聞紙は昔、1kgあたり20円で引き取られていましたが、現在は新聞紙が余り無料で回収されています。
ゴミを出す私たちにはうれしいですが、回収業者にとっては頭の痛い問題です。
この価格低下で新聞紙や雑誌などをトイレットペーパーなどと交換していた「ちり紙交換」の廃品回収も少なくなってしまいました。
こういった理由から、リサイクルの回収システムが崩壊しているのです。
リサイクル時のエネルギー消費問題
リサイクルのため運搬するトラックのガソリン、リサイクル工場のエネルギー源となる燃料も、リサイクルするときに資源の節約になっていないこともあるのです。
リサイクル工場が増えれば、運搬にかかる燃料や費用を削減することはできるでしょう。
しかし、現時点ではリサイクルのために膨大な燃料が使われているという問題もあります。
身近なリサイクルできるゴミ11種類
私たちは、いつもゴミの分別をしていますが、身近なものでリサイクルできるゴミにはどんなものがあるかご存知ですか?
ペットボトル
リサイクル方法:ペットボトルはキャップとラベルをはがし、水洗いして資源ごみの集団回収に出すか、スーパーマーケットなどの回収ボックスに入れる。
リサイクルの用途:繊維・シート・成形品などの新たな製品、食品用PETボトル
プラスチック容器・包装
リサイクル方法:地自体のルールをよく守り、資源ごみの集団回収に出すか、プラスチックのトレイはスーパーマーケットなどの回収ボックスに入れる。
燃えるごみ・燃えないゴミとして出さない。
リサイクルの用途:コークス炉化学原料・合成ガス・高炉還元剤(ケミカルリサイクル)・再生樹脂・パレット
ガラス・ビン
出典:日本ガラスびん協会
リターナルびんマークが表示されているビンは、何度も回収して洗って使われます。
リサイクル方法:買ったお店に戻すか、お店や駅などの回収ボックスへ入れる。
1度しか使われないワンウェイびんは、資源ごみや集団回収に出す。
リサイクルの用途:ガラスびん・道路などに使う砂・家の断熱材など
スチール缶
リサイクル方法:スチール缶だけに分けて資源ごみ・集団回収などに出す。お店などの回収ボックスに入れる。
リサイクル用途:橋や建物、自動車の部品・スチール缶など
アルミ缶
リサイクル方法:アルミ缶のみに分別して、資源ごみ・集団回収に出す。お店などの回収ボックスに入れる。
リサイクル用途:アルミ缶・自動車の部品など
紙
リサイクル方法:新聞紙、本、ダンボールなどそれぞれ同じ種類ごとに分けてまとめます。封筒やカレンダー、お菓子の箱などは、テープやプラスチックなどを取り除いて、紙だけの状態にしてまとめましょう。
廃品回収、資源ごみ、回収ボックスなどに出します。
リサイクル用途:段ボール・新聞紙・雑誌・本・トイレットペーパー・ティッシュペーパー
電池
電池はスリーアローマークと電池の種類を示す英文字(Ni-Cd/Ni-MH/Li-ion)でリサイクルマークが構成されています。
私たちがよく使う電池は
- 使い捨て電池
- 小型充電式電池
- ボタン電池
の大きく3種類に分けることができます。
リサイクル方法:アルカリ乾電池・マンガン乾電池・コイン電池(リチウム一次電池)は自治体で決められた回収場所・回収日に出す。
充電して繰り返し使える「小型充電式電池」、腕時計などに使われる「ボタン電池」は、電気店・ホームセンターなどの小型充電式電池回収BOX・ボタン電池回収缶へ出しましょう。
リサイクル用途:乾電池は、製鉄原料や亜鉛を資源として回収、セメント原料などにリサイクルされる。
自動車
リサイクル方法:自動車販売店などに引き取ってもらう
リサイクル用途:鉄筋・鉄骨・燃料・自動車部品・中古部品としてのリユース
自転車
リサイクル方法:自転車販売店で回収してもらうか、市区町村の粗大ゴミとして回収してもらう。
電動アシスト自転車のバッテリーは、自転車販売店が回収しています。
リサイクル用途:鉄の原料
家電製品
リサイクル方法:使い終わった家電製品は、その家電を売ったお店、または買い替えするお店にリサイクル料を払い回収してもらいます。
リサイクル用途:鉄・銅などを作る工場に原料として売られ、さまざまな製品に生まれ変わる
パソコン
画像元:パソコン3R推進協会
無料で回収・リサイクルされるパソコンには「PCリサイクルマーク」が表示されます。
リサイクル方法:パソコンを作った会社に連絡をすると引き取りしてくれます。また「PCリサイクルマーク」のマークが付いているパソコンは無料で市区町村でも回収を行っています。
もしも貼られていない場合は、各メーカーのウェブサイトなどで確認し、PCリサイクルマークの申し込みを行いましょう。
リサイクル用途:鉄・銅・アルミ・金・銀・プラスチック・ガラスなど
スマホ・携帯電話
リサイクル方法:携帯電話のお店、または市区町村で無料回収してくれます
リサイクル用途:金・銀・銅・携帯電話の部品
お得にリサイクルする方法3つ
お家には使わないけれど、捨てるのはもったいないし、まだ使えるものって意外と眠っていたりしますよね。
使わないけど、まだ使えるものはリサイクルなどで利用されたらうれしいですし、しかもお金になったら一石二鳥ですよね。
お得にリサイクルできる方法があるのでご紹介します。
フリマアプリで売る(メルカリなど)
「メルカリ」は、スマホで簡単にできるフリマアプリです。
使わなくなったけど、まだ使えるものをメルカリに出品して、欲しい人に売るという処分方法があります。
スマホから手軽に出品できるのでおすすめです。
JIMOTYで引き取り、購入してもらう
「ジモティ」では、誰でも無料で地元の情報を発信したり入手できる掲示板サービスです。
掲示板で中古品などを”あげます・譲ります”と募集することができます。
利用者は地元の人がほとんどなので、ソファーなどの大きなモノも取りに来てもらえるメリットがありますよ!
リサイクルショップで買取してもらう
近所のリサイクルショップで買取してもらう方法もあります。
お店によっては店頭買取だけでなく、宅配で送って買い取りしてもらったり、自宅まで取りにきてくれる出張サービスも行っています。

よくある質問
- Q. 日本のリサイクル率は本当に89%なのですか?
- A. 環境省の発表では有効利用率は89%ですが、その大半はサーマルリサイクル(焼却による熱回収)です。世界基準ではリサイクルと認められず、実際のリサイクル率は25%前後にとどまります。
- Q. PETボトルはどのくらいリサイクルされていますか?
- A. 2023年度のPETボトルリサイクル率は85.0%です。国内で約41.5万トン、海外で約12.6万トンが再資源化されています。国内循環は十分ではなく、海外依存が課題になっています。
- Q. サーマルリサイクルは環境に良いのですか?
- A. サーマルリサイクルは焼却時の熱を回収し発電や暖房に利用しますが、CO₂排出が避けられません。海外では「リサイクル」とは見なされず、あくまで熱回収の位置づけです。
- Q. 私たちにできる身近なリサイクル対策はありますか?
- A. ゴミを正しく分別するだけでなく、ペットボトルを水で洗う、繰り返し使える容器を選ぶ、リサイクルショップやフリマアプリで再利用するなどが効果的です。「使わない・繰り返す・再利用する」を意識することが大切です。
まとめ:日本のリサイクルの常識と世界基準の違い
日本のリサイクルの大部分は、焼却によるサーマルリサイクルに依存しています。 この方法は、使えるはずの資源まで燃やしてしまっている可能性があり、世界基準ではリサイクルと認められていません。
PETボトルは回収率85%と世界トップクラスですが、その約2割は海外で再資源化されています。 つまり「数字上は高いリサイクル率」でも、国内で循環しきれていないのが現実です。
もし輸出先が受け入れを停止すれば、日本国内のリサイクルシステムは一気に行き詰まるリスクを抱えています。
私たちにできることは、ゴミを分別するだけでなく、なるべく使わない・繰り返し使う・再利用するという意識を生活の中に取り入れることです。
「数字」ではなく、実際に資源が循環しているかを重視する姿勢が、これからの日本に必要ではないでしょうか。
令和の新常識に!リサイクルよりも重要な18Rを知っている?>
リサイクルに役立つマーク|食品容器環境美化協会https://www.kankyobika.or.jp/recycle/mark-of-recycle